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KSTF2020

​審査員応援コメント

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審査員の方々から京都学生演劇祭への応援コメントを頂きました。(2020/7/18)

//審査員プロフィールはこちら

谷賢一 (劇団DULL-COLORED POP) 作家/演出家/翻訳家

今の学生たちがどんな新しい表現を模索するか、既存の演劇を破壊するか、楽しみにしています。「新しいことをやって成功したかったら、人の言うことを聞いてはいけない」という言葉が私は好きです。私たち審査員の理解すら超えたものが観れることを期待します。

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野村眞人 (劇団速度) 演出家

京都学生演劇祭2020に向けて

今回、審査員を務めます、野村眞人です。よろしくお願いします。

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ところで、今回演劇祭に参加される皆さんは、ふだん、というか、コロナ禍以前、というか、どれくらい上演作品を観ていたでしょうか?

毎週のように観ていた人もいれば、年に数回、という方もいると思います。

全く観ない人もいると思います。

観にいく理由としては、その作家が好きであるとか、知り合いが出演しているとか、その辺りでしょうか。

どうでしょうか?

行かない理由としては、どうでしょうか。

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またまたところで、例年の演劇祭の観客数がどれほどであるか知っていますか?

わたしが参加した2016年は、1000人弱という観客数だったと思います。

多いと思うか少ないと思うか、これはとても重要な話ですが、今は措いておきます。

そうではなくて、その1000人弱の観客がそれぞれ、どうして演劇祭に、その中の個別の上演に、足を運ぶのだろうか、ということです。

次いで言えば、だから観に来ないのか、ということになるかもしれません。

つまり、ある一人の観客が上演を観に行く(あるいは、行かない)ことを思い立ち、実際に観に来たとして、その人は「何を」観に来たのか。

上演はふつう、非物質的な性格が強いので、あるいは観客はどういう「こと」を観に来るのか、と言う方が正確かもしれません。

また、作る側の論理として、上演を「どう」見せるか、というのはとても大事なことですが、それは、作るなら誰でも考えることでしょうし、観客もそれはわかっています。

であれば、もう一度。観客はどんなことを観にくるのでしょうか。

どうやら、歴史ものやSFものなどといったコンテンツ云々の話でも、ドラマあるいはポストドラマなどというスタイルの話ではなさそうです。

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演劇は、突き詰めていえば、「あなたのことをわたしが見る」という関係のことだと思います。

そして、客席は、わたしをあなた化し、あなたをわたし化する装置なのだろうと思います。

あなたを含め、各自的に「わたし」であるところの「わたし」(すなわち観客)が「あなた」を観るということは、あるいは観ないということは、どういうことなのか。

この、「わたし」と演劇との接点において、根本的に重要なことを、ここから、もう一度考えたいと思っています。

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依然として予断を許さない新型コロナウイルスの影響によって、観客という存在のあり方が変わったのか、変わっていないのか、それはまだ分からないことです。

しかし、わたしは、コロナ禍を経験している中で先駆的に開催されるであろうこの演劇祭を訪れる観客は、これまでとは違う観客であるだろうと感じています。

その点において、演劇祭の面白さと個別の上演の面白さが両義的に成り立つと良いなと思っています。

だから、わたしは観に行くひとりの観客として、その演劇との接点に、あなたがどういう「こと」をおくか、それを楽しみにしています。

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野村有志 (オパンポン創造社) 劇作家/演出家/俳優

このご時世の上演がどれほど困難を極めるか身をもって知っているつもりです。

だからこそ楽しみで仕方ありません。

多様な表現を模索せざるをえない今、演劇を通してどの様な表現と出会えるのか、表現方法ではなくとも皆さんが今何を感じられてるのか、同時代を生きるものとしてワクワクしています。

なんにせよ、こちらが嫉妬するほどの煌めく姿を目の当たりにすることでしょう。

誠実に向き合わせて頂きます。どうぞ宜しくお願いします。

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藤井颯太郎 (幻灯劇場) 作家/演出家/俳優

どうも、藤井颯太郎です。僕が所属する幻灯劇場は2015年に『ミルユメコリオ』、2016年に『虎と娘』という作品で京都学生演劇祭に参加しました。年齢もかなり近い皆さんをどんな風に応援するか悩みましたが、恐らく僕は学生演劇祭史上最も運の良かった人間の一人だったと思うので、その話を書いておこうと思います。他の審査員の方は、もうちょっと良いことを書いてくださる気がするし、なんか、おいしい話聞いて、やる気出たらいいなぁって。

 2016年『虎と娘』初日の上演後、作者に会いたいという女性が楽屋に訪ねて来た。彼女はフランスを拠点に活動する世界的なダンサーの伊藤郁女さんでした。偶然仕事で日本に来ていて、偶然京大の前を通りかかって、たまたま僕らの作品を観てくれたらしい。「二年後パリとKAATで上演する作品を、森山未來君と作るからシナリオを書いて欲しい」とのこと。流石にその場ではにわかに信じられず半信半疑だったが、演劇祭表彰式の日、式の前に食事しながら改めて仕事の内容を聞かされ、正式に依頼された。マグロを食べながら、うわぁ光栄だなーって思ってたら突然メールが来た。2015年に上演した『ミルユメコリオ』がせんだい短編戯曲賞にノミネートされたというメールだった(しかも後日受賞する)。うわぁこんなに良いことが重なって良いのかしらー!と浮き足立ちながら出席した京都学生演劇祭の表彰式で大賞を頂いた。一晩三時間の間に京都と仙台の賞に評価され、横浜とパリの仕事を貰うことは、人生でそう無い気がする。そんなミラクルもあったりします京都学生演劇祭。

 観客や審査員、運営スタッフや才能ある同世代の作家、色んな人に出会えるのがこのお祭りの良さです。だからこそ一生懸命、真摯に楽しく演劇をこさえて、出会うことに備えましょう。という話でした。なんか、おいしい話聞いて、やる気出してもらえたら幸いです。

森山直人 演劇批評家

2020年――こんなことになるとは、誰が予想していただろうか? 良かれ悪しかれ、「世界」は新たな段階に向けて大きく動き始めたように見える。だが、そんな下らないことに振り回される必要などまったくない。自分たちが信じたフィクションを、観客の前で成立させること。ひとまず、それだけに徹底的に向き合えばよいはずだ。どんなに小さくとも、それこそが「世界」を変えていく第一歩になるのだから。

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